皆さんは、アメリカの精神科医エイメン博士が提案された
ADHDの6タイプの分類のことをご存知でしょうか?
「わかっているのにできない」脳〈1〉エイメン博士が教えてくれるADDの脳の仕組み
というエイメン博士の書籍が、2001年に日本で発売されてから
ADHDの6タイプの分類については、広く知られるようになったようです。
(残念ながら、現在この書籍は販売されておらず、中古で購入するか
図書館で借りて読むという方法しかないみたいです。)
先日から、私自身このADHDの6タイプについて詳しく知りたくなり、
書籍やウェブ等を調べていたところ、現在は新たに1タイプが追加され、
“ADHDは7タイプに分類されている”ことがわかりました。
そのことについて書かれた記事が日本語では見つからなかったので、
この情報が共有できればと思い、今回の記事を書くことにしました。
ADHDって何タイプあるの?
まずは基本から押さえたいと思います。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)は現在、不注意、多動性、衝動性の
現れ方の違いにより、以下の3つのタイプに分けられています。
- 不注意優勢型
- 多動性・衝動性優勢型
- 混合型
タイプ別にみてみると、不注意優勢型は女児に多く、
多動性・衝動性優勢型は 男児に多い傾向があり、この性差の傾向は、
大人のADHDにも当てはまります。
私自身ADHDと診断をされてから、書籍やネットで情報を集めたり
Twitter等で同じくADHDと診断をされた方々と交流をしてきました。
そこではじめて、ADHDは不注意、多動性、衝動性の現れ方や
それぞれのタイプにより、全く異なった行動特性がみられることに
気がついたのです。
ADHDのタイプの違いについて
ちょっと例を挙げて話をしてみますね。
ADHDを持っている方の中には、自身の“困っている特性や苦手な部分”
に対して、 すぐに改善策を考え即実行できるタイプがいます。
私はその逆で、自身の苦手な部分がわかっていても
“その対策や工夫等を調べて知識が増える”だけで終わってしまい、
改善どころか全く自分の実生活へは活かされません。
そんな自分が本当に嫌で嫌で仕方がなく、最近では自身のことを
『ダメADHD』の見本だと思うようになりました(汗)
もっと掘り下げて話をしたいところですが、それはいつかの機会にするとして、
同じADHDなのに、どうしてこんなにもタイプが違うのか、
そもそもなぜタイプに違いがでるのか、とても大きな疑問を抱いたわけです。
その疑問が『エイメン博士によるADHD6タイプの分類』へと結びつき、
それぞれのタイプ分けについて、もっと詳細を知りたいと思ったのでした。
エイメン博士が分類したADHDの6タイプ+追加の1タイプ
全米で最も知名度のある精神科医ダニエル・エイメン博士は、
SPECT*1の所見と臨床症状によって、ADHDの人の脳の働きに
共通点があることに気がつきました。
ADHDは一般的に前頭葉の働きに何らかの問題があると言われていますが、
エイメン博士はそれに加え、側頭葉や大脳皮質の働きにも問題がみられ、
現れる症状もそれぞれに異なるとしています。
エイメン博士は、ADHDを次の6タイプ(+1タイプ追加)に分類しました。
- タイプ1:典型的ADHD
- タイプ2:不注意型ADHD
- タイプ3:過集中型ADHD
- タイプ4:側頭葉型ADHD
- タイプ5:辺縁系型ADHD
- タイプ6:「火の輪」型ADHD
- タイプ7:不安型ADHD(Anxious ADD)
最後に付け加えた『タイプ7:不安型ADHD』が新しく追加されたタイプです。
ADHD Diagnosis and Treatment: The Amen Approach to ADD
It was around 2001 when I wrote my book Healing ADD, in which I talked about six different types of ADD. I just published the newly revised version of the book and added a seventh type. When you know the ADD type, you can target treatment specifically to that symptom cluster.
What did you learn from doing all those scans? - Dr. Amen: ADHD Diagnosis, SPECT Scanning, and More!
エイメン博士へのインタビュー記事の一部分ですが、これを簡単に訳すると
『私が書籍「Healing ADD」にて6タイプの異なるADDについて書いたのは、2001年頃でした。そして今回、この本の新訂版を発表し、7番目のタイプを追加しました。ADDのタイプがわかれば、その症候群に的をしぼった治療が可能となります。』
こういうことでした。
そのエイメン博士の新訂版「Healing ADD」は2013年12月に発売されていました。
洋書ですが、書籍も電子書籍もCD版(!?)でも購入できます。
↑ 英語力0の私ですが、この新訂版を読んでみたくなり思い切って購入しました!
Kindleの機能を使って翻訳しながら少しずつ読み進めています。(大変ですが…)
※洋書の翻訳は現在、Kindle電子書籍リーダー、iOS版とAndroid版アプリでできます。
iOS版の翻訳方法は下記のサイトが分かりやすかったです。(操作はAndroid版も同じ)
遂に!iOS用Kindleアプリで遂に文章コピーが出来るようになって辞書機能も強化された! | りんろぐ。
エイメン・クリニック式ADD分類チェックリスト
分類されたタイプの名前を見ただけでは、何が何だかわからないと思います。
自身がこの6タイプに当てはまるかわかる、チェックリストがありますので、
気になった方はチェックしてみてください。
(新しく追加された「不安型タイプ」は、残念ながら入っていません。)
私自身、上記のチェックリストをしてみて思ったのですが、
ADHDや発達障害を持っている人は、自分を客観的に見ることが苦手です。
チェックリストを進めていく上で、自身が持っている自分への認識と、
他人からみえる実際の自分の姿との間に、大きなズレが生じてしまう
可能性が考えられます。
このことを踏まえ、チェックリストの文面にも記載してありますが、
当人以外、できれば親や兄弟、パートナー等にもチェックリストをみせ
採点してもらうことで、かなり信用度が高まるそうです。
私も夫にお願いし、私自身の採点をしてもらいました。
その結果は…自分でチェックするよりも全体的に点数が高めでした(汗)
↑ この記事では私と生活を共にし、苦労することとなった夫について触れています。
ADHDの7タイプ、それぞれの詳細について
ご自身もADHDだと明かしている医師、星野仁彦先生の書籍
『知って良かった、大人のADHD』内でADHD6タイプについて、
わかりやすく説明をされています。
(この書籍内では、まだ6タイプで紹介されています)
また、エイメン博士が所長をされているAmen Clinicsの
『ADD / ADHD』のページで紹介してあった、それぞれのタイプの
症状や原因等も参考にしつつ、自分なりにまとめてみました。
ADHDの中心的な症状について
Each of the ADD subtypes has its own set of symptoms as a result of the abnormal blood flow patterns in the brain, but for the most part, they all share the same core symptoms.
Demystifying the 7 Types of ADD - ADD / ADHD - Amen Clinics
訳:『脳における異常な血流パターンの結果、ADDのサブタイプそれぞれは独自の症状を持っているが、大抵はそれら全て中核となる同じ症状を共有しています。』
Core Symptoms of ADD
Demystifying the 7 Types of ADD - ADD / ADHD - Amen Clinics
- A short attention span for regular, routine, everyday tasks (homework, chores, etc.)
- Distractibility
- Organization problems (like having a disorganized room and/or always running late)
- Procrastination
- Problems with follow-through
- Poor impulse control (saying or doing something before thinking it through)
訳:『ADDには中核となる症状があります』
- 日常における規則的、習慣的な作業(宿題や雑用など)への集中力の欠如
- 散漫性
- 秩序の問題(散らかった部屋、および/または、いつも遅れてしまうというような)
- 先延ばし
- 最後までやり遂げる問題点
- 衝動をうまくコントロールできない(物事について考える前に、何か言ったりしたりする)
以上のことから、まず“ADHDには中核となる6つの症状がある”ことを踏まえつつ、
ADHDの7タイプの詳細を確認されると分かりやすいかと思われます。
【1】タイプ1:典型的ADHD
集中力が散漫で注意をそらされやすい、秩序や手順を整えることが不得手で、 多動がみられ、落ち着きがなく、衝動性が強いタイプ。自尊心が低い人が多いのも このタイプの特徴です。多動、騒動好き、衝動性のため、幼児期から思春期、成年期に至っても、 毎日のように身近な人たちと衝突することになるからです。
①タイプ1:典型的ADHD - 知って良かった、大人のADHD
脳のSPECT検査を行うと、安静時には正常ですが、集中を要する課題に取り組んでいる時だけ、 前頭前野皮質を中心に、脳の活動が低下します。ここは、注意の集中、持続力、秩序の構成、 計画性、衝動抑制をつかさどる部分です。(P246-247)
- 症状:注意散漫、無秩序、多動、衝動的、不注意、物忘れ
- 考えられる原因:集中時における前頭前野皮質および小脳と大脳基底核の下側の活動低下、ドーパミン不足
【2】タイプ2:不注意型ADHD
集中力が浅く、けだるげで、動作が遅く、意欲がにぶい。周囲からは「ぼんくら」「夢見屋さん」「ものぐさ」 と言われることが多いタイプ。
②タイプ2:不注意型ADHD - 知って良かった、大人のADHD
このタイプは女性に多いようです。問題行動は目立たないために、なかなか診断されるに至りません。(P247)
- 症状:不注意、白昼夢、無関心、注意散漫、物忘れ、先延ばし傾向
- 考えられる原因:集中時における前頭前野皮質および小脳と大脳基底核の下側の活動低下、ドーパミン不足
【3】タイプ3:過集中型ADHD
注意の方向を切り替えるのが下手で、嫌な考えを振り払うことができず、困った行動の繰り返しから 抜けられないタイプ。こだわりにとりつかれる、必要以上にくよくよ気をもむ、柔軟な発言ができず、 反応したり、理屈っぽく反論したりする人が多いといえます。このタイプでは強迫性障害の患者と同様、 脳の前帯状回という部位(意識の切り替えを担当する部分)の活動が過剰になっているようです。 前帯状回は脳の中でもセロトニン神経細胞の多い部分です。そして、過集中型ADHDの人には、 強迫性障害と同様、セロトニンに作用する物質が非常に有効であることが分かっています。 (P247-248)
③タイプ3:過集中型ADHD - 知って良かった、大人のADHD
- 症状:基本的ADHDの症状、注意の切り替えが苦手、強迫行動、強迫観念、心配性、柔軟性の欠如、反抗的
- 考えられる原因:前帯状回の過活動、前頭前野皮質および小脳と大脳基底核の下側の活動低下、ドーパミンとセロトニン不足
【4】タイプ4:側頭葉型ADHD
集中力に欠け、いらいらいしやすく喧嘩腰で、暴力的な空想や願望に悩むことがあり、 気分がころころ変わりやすく、かんしゃくを起こしがちな衝動性が特に激しいタイプ。LDも重なっていて、 記憶力が悪いのもこのタイプの特徴です。 SPECTでは、脳の側頭葉の活動が低いのに加えて、集中しようとすると、前頭前野皮質の血流も 少なくなります。側頭葉は、気分の安定、記憶、学習、怒りの抑制などに関係している部分です。 (P248)
④タイプ4:側頭葉型ADHD - 知って良かった、大人のADHD
- 症状:基本的ADHDの症状、苛立ち、短気、激怒、パニック、恐怖症、軽い偏執、否定的もしくは暴力的考え、原因不明の頭痛もしくは腹痛、情緒不安定
- 考えられる原因:側頭葉の活動低下(時々増加)、集中時における前頭前野皮質および小脳と大脳基底核の下側の活動低下
【5】タイプ5:辺縁系型ADHD
このタイプでは、集中力が散漫で、軽いうつ状態が常に続き、発想や考え方が悲観的で、 マイナス思考に陥りがちです。「何をしても無駄だ、何もかも駄目だ」という感覚に襲われることが 多いようです。 SPECT画像では、前頭前野皮質は安静時も集中時も過少で、深部辺縁系の活動が過剰に なっています。ここは気分や感情をコントロールする部位です。 (P248-249)
⑤タイプ5:辺縁系型ADHD - 知って良かった、大人のADHD
- 症状:基本的ADHDの症状、否定的、睡眠障害、絶望感、罪悪感、無気力、引きこもり、低自己評価
- 考えられる原因:深部辺縁系の過活動、前頭前野皮質および小脳と大脳基底核の活動低下
【6】タイプ6:「火の輪」型ADHD
集中力に欠け、どんな些細なことでも非常に注意をそらされやすく、怒りに満ち、いらいらしがち。 周囲の刺激に過敏に反応し、多弁かつ極度に反抗的で、周期的に不機嫌な時期がめぐってくる タイプです。このタイプのSPECTでは、大脳皮質全体が活動過多で、抑制がきかなくなっています。 特に活動過多がよくみられるのは、帯状回、頭頂葉、側頭葉、前頭前野皮質などです。 (P249)
⑥タイプ6:「火の輪」型ADHD - 知って良かった、大人のADHD
- 症状:基本的ADHDの症状、強い衝動性、怒り、攻撃性、柔軟性欠如、一つの考えにとらわれる、気分の周期的変化、早口、過敏性(触覚、聴覚、視覚、臭覚など)
- 考えられる原因:大脳皮質全体の活動過多
【7】タイプ7:不安型ADHD
With Anxious ADD, there is low activity in the prefrontal cortex while there is overactivity in the basal ganglia, which sets the body’s “idle speed” and is related to anxiety. The ADD symptoms in people suffering with this type tend to be magnified by their anxiety. Treatment for people with Anxious ADD often includes both calming and stimulating the brain.
Type 7: Anxious ADD - ADD / ADHD - Amen Clinics
訳:不安型ADDは、体の「アイドル速度(車で言うアイドリング)」を担う部分で不安に関連した大脳基底核が過活動をする一方で、前頭前野皮質における活動低下がみられます。このタイプで苦しんでいる人々のADDの症状は、不安によって拡大される傾向にあります。不安型ADDを持つ人々の治療には、多くの場合、心を落ち着かせることと脳を刺激することの両方が含まれます。
- 症状:基本的ADHDの症状、神経質、緊張、心配性、パニック発作、社会不安、頭痛などの物理的なストレス症状、争いを避ける傾向、最悪な結果を予想
- 考えられる原因:大脳基底核の過活動、集中時における前頭前野皮質および小脳の活動低下
↑ ADHDのことが詳細に分かるので、書籍を読むことでより理解が深まりました。
ADHDとADDの違いって?
ADHDは「注意欠陥・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)」
ADDは「注意欠陥障害(attention deficit disorder)」
2つの違いは「多動性」の有り・無しになるのですが、
この名称と概念については医学の進歩や研究結果に基づき変わってきました。
- DSM-Ⅲ(1980年)では「ADD」を採用、あくまで不注意が中心症状とされる
- 改定版DSM-Ⅲ-R(1887年)では多動を伴う障害に限定、名称を「ADHD」へ修正
- DSM-IV(1994年)では不注意、衝動性、多動性が必ずしも揃わないことを再び認め、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3種類の下位分類を提案
その前後の経緯については、Wikipedia内「注意欠陥・多動性障害」の
『病名・概念の変遷』の項目で確認していただければと思います。
エイメン博士の考え方
今回、紹介をしたエイメン博士は正式名称となった「ADHD」ではなく、
現在も「ADD」という名称を使われています。
その理由について書籍内で触れていました。
I prefer the name ADD, as ADHD highlights the hyperactive component of the disorder (H) and discards half the people who have it, particularly girls, who are typically not hyperactive.
Preface to the Revised Edition of Healing ADD:Thirteen Years Later - Healing ADD Revised Edition: The Breakthrough Program that Allows You to See and Heal the 7 Types of ADD[Kindle版]
訳:(ADHD/ADDの)障害を持つ中の半分、一般的に多動ではない人々(特に女の子)を切り捨て、多動性(H)の要素を強調するADHDより、私はADDという名称を好みます。
エイメン博士の言葉の中には、先ほど話した
“改定版DSM-Ⅲ-Rでは多動を伴う障害に限定、名称を「ADHD」へ修正”
という、この出来事への反発が多少なりとも入っていると感じられました。
(他にも色々と「ADD」を使用する理由は考えられますが。)
このことを知り、ADHDとADDのどちらの名称で紹介をするか悩みましたが、
私自身は現在正式名称となっている「ADHD」の方が分かりやすいと思い、
こちらで統一することにしました。
私が主治医から教わったこと
私には分かりやすい多動がないので、“自分はADDではないか?”と
主治医に以前、伺ったことがあります。
「行動において多動がみられない場合でも、思考に多動があるのなら、
それは多動性があると考えられています。」
と、主治医からはこのように教えていただきました。
確かに、私の頭の中はいつも忙しく、色々なことが浮かんでは消える
を繰り返している状態でした。
(現在は、服用している薬のおかげで思考の多動は治まっています。)
その他にも、子どもの頃から授業中や講義中等の手遊びがひどかったので、
やはり多動性は多少あると考えています(笑)
↑ この記事内でも“思考の多動性”という見出しで、この問題に触れています。
最後に
最後に言うことでもないのですが、私は本当に英語が苦手でして。
高校3年生の時、大学には合格したものの英語の成績が悪すぎて卒業が危ない!
という情けない状態に陥ったことがありました。
(レポート提出でなんとか卒業はできました…)
そんな私が今回、自力で翻訳をしているので、間違った訳や解釈をしている
可能性は大いに考えられます。
もし、そのような箇所を見つけた場合は、こっそりとコメント欄やブクマ等で
教えてくださいね!(全然こっそりじゃないw)
速やかに翻訳の修正を行いたいと思います。
よろしくお願いしますm(_ _)m
エイメン博士は、7タイプそれぞれへの効果的な服薬やサプリメント、
治療方法等も書籍内で詳細に語られています。
(今回の記事では紹介していませんが、書籍の“なか見!検索”で確認が可能です。)
私も現在、サプリメントに凝っていて(というか、調べまくっている)
情報を集めているので、これからいくつか試してみる予定です!
今回はADHD7タイプの紹介で終わりましたが、私のADHDのタイプやその対策、
サプリを飲んだ感想については、今後記事にしたいと思っています。
よろしければまた遊びに来てください♪
↓ ADHDは“オメガ3脂肪酸のレベルが低いらしい!?”と知り、書いた記事です。
↓ 先延ばし傾向に困っている方には、こちらの記事がオススメです!
◆ブログランキングに参加しています
*1:SPECTとは、シングル・フォト・エミッションCTの略語で、体内に注入したRI(放射性同位元素)の分布状況を断層画面で見る検査のこと。
参考→脳の断面の血流状態が鮮明にわかるSPECT・PET